日々の清掃や侵入経路の封鎖といった予防策を徹底していても、万が一、ゴキブリの侵入を許してしまった場合。あるいは、すでに家の中に潜んでいるかもしれない敵を、根こそぎにしておきたい。そんな時に、絶大な効果を発揮するのが、「ベイト剤(毒餌)」です。ベイト剤は、ゴキブリ予防における、いわば「最終防衛ライン」であり、最も攻撃的な予防策と言えるでしょう。ベイト剤は、ゴキブリが好む餌に、遅効性の殺虫成分を混ぜ込んだものです。この「遅効性」というのが、ベイト剤が「巣ごと駆除できる」と言われる所以であり、最大のポイントです。ベイト剤を食べたゴキブリは、すぐには死にません。数日間かけて、ゆっくりと毒が体に回り、何も知らずに巣へと帰っていきます。そして、ここからが、ベイト剤の真骨頂である「毒の連鎖」が始まります。ゴキブリには、仲間のフンや、死骸を食べるという習性があります。ベイト剤を食べて死んだゴキブリの死骸や、そのフンの中には、まだ殺虫成分が残っています。これを、巣の中にいる他のゴキブリが食べることで、毒は、まるでドミノ倒しのように、次から次へと連鎖していくのです。この効果により、直接ベイト剤を食べていない、巣の奥深くに潜むメスや幼虫、さらには、硬い殻に守られた卵から孵化したばかりの幼虫までも、時間をかけて一網打尽にすることが可能となります。ベイト剤を設置する場所は、ゴキブリが好みそうな、暗くて、暖かくて、湿気のある場所が効果的です。具体的には、キッチンのシンクの下や、冷蔵庫の裏や下、コンロの周り、食器棚の隅、洗面台の下、あるいは、テレビの裏側なども、熱を持つため格好のポイントです。市販のベイト剤には、様々な種類がありますが、有効成分が異なる複数の種類を、同時に設置すると、薬剤への抵抗性を持つゴキブリが現れるのを防ぎ、より高い効果が期待できます。ベイト剤は、目に見えない敵との静かなる戦いを、確実に勝利へと導いてくれる、最も信頼できる兵器なのです。