ブユによる被害は、蚊のように皮膚に針を「刺す」のではなく、鋭い口器で皮膚を「咬み切り」、そこから流れ出てくる血液を吸うという特徴があります。この咬み傷にブユの唾液腺から分泌される物質が注入されることが、後の厄介な症状の原因となります。この唾液には、血液を固まりにくくする成分や麻酔成分、そしてアレルギー反応を引き起こす様々な物質が含まれています。咬まれた直後は、麻酔成分の影響で痛みやかゆみを感じないことも多く、小さな赤い出血点ができる程度で見過ごしてしまうことも少なくありません。しかし、数時間後から翌日にかけて、強いアレルギー反応が現れ始めます。主な症状としては、まず激しいかゆみが出現し、患部が赤く腫れあがります。この腫れはしばしば硬いしこりのようになり、熱を持つこともあります。場合によっては、中心に水ぶくれができることもあり、その見た目や症状の激しさから、多くの人を苦しめます。蚊に刺された場合と比較すると、ブユによる症状は格段に強く、治るまでに時間がかかるのが特徴です。かゆみや腫れが1週間以上続き、しこりが数週間から数ヶ月残ることも珍しくありません。これは、ブユの唾液に含まれる成分に対するアレルギー反応が強く、かつ皮膚の比較的深い部分にまで影響が及ぶためと考えられています。アブに咬まれた場合は、咬まれた瞬間に強い痛みを感じることが多いですが、ブユの場合は後から症状が悪化する傾向があります。ごく稀ではありますが、体質によってはブユの唾液成分に対して強いアレルギー反応を示し、アナフィラキシーショックを起こす可能性も指摘されています。呼吸困難や全身のじんましん、意識障害などの症状が現れた場合は、ただちに医療機関を受診する必要があります。