家庭でのユスリカ対策では限界がある場合や、工場、店舗など広範囲かつ徹底的な駆除が求められる場合、専門業者によるプロの技術が必要となります。プロが行うユスリカ駆除は、発生状況の調査から始まり、薬剤の選定、施工方法、そして再発防止策まで、科学的な根拠に基づいた総合的なアプローチを取ります。まず、薬剤の種類ですが、ユスリカのライフサイクルに合わせて、幼虫対策と成虫対策の両面から薬剤が選定されます。幼虫(アカムシ)対策としては、IGR剤(昆虫成長制御剤)が用いられることがあります。これは、ユスリカの脱皮や羽化を阻害し、成虫になるのを防ぐ薬剤です。発生源となる河川や側溝、浄化槽などに投入することで、成虫の発生数を根本から減らすことを目的とします。ただし、使用場所や環境への影響を考慮し、慎重な判断が必要です。成虫対策としては、主にピレスロイド系の殺虫剤が使用されます。これらは即効性が高く、ユスリカに対して高い殺虫効果を発揮します。施工方法としては、まず空間噴霧があります。専用の噴霧器(ミスト機やULV機)を用いて、殺虫剤の微粒子を空間に放出し、飛んでいるユスリカを直接駆除します。次に、残留噴霧です。建物の外壁や窓枠、照明周りなど、ユスリカが止まりやすい場所に殺虫剤を噴霧し、薬剤が付着した場所に止まったユスリカを駆除する方法です。これにより、一定期間の忌避効果や殺虫効果が期待できます。薬剤の選定にあたっては、安全性への配慮も不可欠です。特に食品工場や飲食店などでは、人体や食品への影響が少ない薬剤を選び、使用方法や場所を厳密に管理します。また、薬剤だけでなく、物理的な対策も重要です。防虫ネットやフィルターの設置、侵入経路の封鎖、紫外線カットフィルムの施工、誘虫ランプと捕虫器の適切な設置なども、プロの重要な技術の一部です。プロによるユスリカ駆除は、単に薬剤を散布するだけでなく、発生源の特定、生態の理解、環境への配慮、そして様々な技術を組み合わせることで、最大の効果を目指す専門的な作業なのです。
プロが用いるユスリカ駆除の薬剤と技術