ある日の午後、洗濯物を取り込もうとベランダに出た私の目に、見慣れないものが飛び込んできました。エアコン室外機の上に、灰色がかった小さな塊。恐る恐る近づいてみると、それは紛れもなく蜂の巣でした。しかも、数匹のアシナガバチが巣の周りをうろついています。血の気が引くのを感じました。蜂は大の苦手です。どうしよう、業者を呼ぶべきか。でも、まだ巣は小さいし、費用もかかる。インターネットで調べると、初期の巣なら市販のスプレーで駆除できるという情報がたくさん出てきました。よし、自分でやってみよう。そう決意したものの、心臓はバクバクです。早速、近所のドラッグストアで、噴射距離が長いと評判の蜂駆除スプレーを購入しました。店員さんにも相談し、アシナガバチ用であることを確認。さらに、念には念を入れて、厚手の長袖パーカー、帽子、マスク、ゴム手袋を用意しました。白い服が良いと書いてあったので、白いパーカーを選びました。駆除を決行するのは、蜂の活動が鈍る夜間が良いとのこと。夕食を済ませ、家族が寝静まるのを待ちました。夜10時過ぎ、懐中電灯(赤いセロファンを貼りました)とスプレーを手に、いざベランダへ。昼間よりも蜂の数は減っているように見えましたが、巣には数匹が張り付いています。風向きを確認し、風上から巣を狙います。スプレー缶を持つ手が震えるのが分かりました。深呼吸を一つして、説明書通り、巣から3メートルほど離れた位置から、一気にスプレーボタンを押し込みました。「シューッ!」という激しい音と共に、白い薬剤が巣に向かって勢いよく噴射されます。数匹の蜂が薬剤を浴びて地面に落ちましたが、何匹かは飛び立とうとします。私はパニックになりかけながらも、「ここでやめたらダメだ!」と自分に言い聞かせ、スプレー缶が空になる勢いで噴射し続けました。数十秒間の噴射の後、恐る恐る巣を見ると、蜂の動きは完全に止まっていました。すぐに家の中に駆け込み、ドアを閉めて鍵をかけ、しばらく息を整えました。翌朝、おそるおそるベランダを確認すると、蜂は一匹もおらず、巣は静まり返っていました。棒を使って巣を落とし、ビニール袋に入れて固く縛り、ゴミに出しました。駆除が成功した安堵感と共に、もう二度とやりたくない、というのが正直な気持ちです。今回の経験で、蜂駆除は決して甘く見てはいけないと痛感しました。