超音波、可聴域の音、低周波音、自然音、人工音など、音の高さ(周波数)や大きさ(音圧)、音色によって、蜂の反応は異なるのでしょうか。また、蜂の種類(スズメバチ、アシナガバチ、ミツバチなど)によっても、音に対する感受性や反応の仕方に違いはあるのでしょうか。現在の科学的知見に基づいて考察してみましょう。まず、周波数による違いです。前述の通り、超音波(20kHz以上)に対する蜂の明確な忌避反応は確認されていません。人間の可聴域(約20Hz〜20kHz)の音についてはどうでしょうか。一般的に、昆虫は人間ほど広範囲な音を聞き分けているわけではないと考えられています。しかし、特定の周波数帯に敏感な可能性はあります。例えば、一部の研究では、ミツバチが特定の低周波音(数百Hz程度)に反応し、コミュニケーションや警戒行動に利用している可能性が示唆されています。しかし、これが他の蜂にも当てはまるか、また忌避効果を持つかは不明です。むしろ、スズメバチなどは、低い周波数の大きな音や振動(例えば草刈り機のエンジン音など)に対して、警戒心を強め、攻撃的になることが知られています。これは、巣に対する物理的な脅威として感知するためと考えられます。音の大きさも重要な要素です。小さな音に対して蜂が特別な反応を示すことは考えにくいですが、突然の大きな音(破裂音、打撃音など)は、蜂を驚かせ、刺激する可能性があります。巣の近くでの大きな物音は避けるべきでしょう。次に、蜂の種類による違いです。スズメバチやアシナガバチは、巣を防衛する本能が強く、巣への刺激に対して非常に攻撃的です。そのため、音や振動に対しても敏感に反応しやすいと考えられます。一方、ミツバチは比較的温厚ですが、巣に危険が迫ればやはり防衛行動をとります。マルハナバチなど単独性の蜂は、巣を防衛する必要性が低いため、音に対する反応も異なる可能性があります。しかし、これらも種や状況によって異なり、一概には言えません。現状では、「この音なら全ての蜂が嫌がる」「この種類の蜂にはこの音が効く」といった明確なデータは存在しません。音の種類や蜂の種類によって反応が異なる可能性はありますが、それを蜂よけとして実用化するには、さらなる研究が必要です。むしろ、どのような音や状況が蜂を刺激し危険を招くかを理解し、それを避けることの方が重要と言えるでしょう。