去年の梅雨のことです。長雨が続いたある日の朝、庭に出てみると、なんとも奇妙な光景が広がっていました。玄関脇に積んである古いレンガの隙間や、庭石の表面に、細長い巻貝が無数に張り付いていたのです。大きさは2センチから3センチくらい、茶色っぽい殻で、確かに形がキセルの吸い口に似ています。「これがキセルガイか…」と思いました。以前、図鑑で見たことはありましたが、実物、しかもこれほどの数を見るのは初めてです。正直なところ、少し気味が悪いと感じてしまいました。よく見ると、アジサイの葉の上や、植木鉢の縁にも這い回っています。このまま放置しておくと、庭の植物が食べられてしまうかもしれない。そう思い、駆除を決意しました。まずは手で取ることから始めました。ゴム手袋をはめ、一匹一匹つまんではバケツに入れていきます。しかし、数が多く、石垣の隙間などに入り込んでいるものはなかなか取れません。それに、触った感触もあまり気持ちの良いものではありませんでした。次に試したのは、熱湯です。沸かしたお湯を、キセルガイが集まっている場所にゆっくりとかけてみました。効果はありましたが、植物の近くでは使えませんし、広範囲に適用するのは大変です。そこで、ホームセンターでナメクジ・カタツムリ用の誘引殺虫剤を買ってきて、発生しやすいと思われる場所に撒いてみました。顆粒状の薬剤で、これを食べると駆除できるというものです。翌朝確認すると、薬剤の周りにキセルガイの殻がいくつか転がっていました。効果はあったようです。しかし、薬剤を使うことには少し抵抗もありました。小さな子供やペットがいるわけではありませんが、庭の他の生き物への影響も気になります。この経験から、キセルガイ対策は一筋縄ではいかないと感じました。発生してから駆除するのも大変ですが、やはり日頃から庭を整備し、発生しにくい環境を作ることが一番大切なのかもしれません。雨上がりの庭で見つけた小さな訪問者たちは、私に庭の手入れの重要性を改めて教えてくれたような気がします。