これは、私たちが過去に扱った中でも特に発生源の特定が困難だったチョウバエ駆除の事例です。依頼主は都内の一戸建てにお住まいの方で、数ヶ月前からチョウバエに悩まされていました。ご自身で排水口の清掃や市販の殺虫剤の使用など、あらゆる対策を試みたものの効果がなく、発生源が全く分からないとのことでした。私たちはまず、基本的な調査として、キッチン、浴室、洗面所、トイレなどの水回りを徹底的に点検しました。排水口内部をスコープカメラで確認しましたが、スカムの付着は軽微で、直接的な発生源とは考えにくい状況でした。次に、床下や天井裏へのアクセスが可能だったため、漏水や湿気の有無を確認しましたが、特に異常は見られません。観葉植物やエアコンなどもチェックしましたが、発生の痕跡はありませんでした。調査は難航しましたが、私たちは依頼主へのヒアリングを再度行い、生活習慣や家の構造について詳しく伺いました。その中で、依頼主が「そういえば、キッチンの床の一部が少し浮いているような気がする」と話されたことが突破口となりました。問題の箇所を確認すると、床材の下の防水層に微細な亀裂があり、そこから水が染み込んで床下に溜まっていることが判明したのです。床材を剥がしてみると、湿った床下の空間に大量のチョウバエの幼虫と蛹が確認されました。原因は、キッチンの床へのわずかな水漏れが長期間放置され、床下にチョウバエの繁殖に適した環境を作り出していたことでした。この事例から得られた教訓は、チョウバエの発生源は必ずしも目に見える場所にあるとは限らないということです。建物の構造的な問題や、普段見えない場所での水漏れなども疑い、多角的な視点で調査を進める重要性を再認識させられました。