ある日、フローリングの隅や木製家具の下に、ふと目をやると落ちている、きな粉のようなサラサラとした粉。最初はただの埃やゴミだと思い、掃除機で吸い取ってしまうかもしれません。しかし、数日経ってもまた同じ場所に同じような粉が溜まっているとしたら、それは単なる汚れではない可能性があります。その謎の木くずの正体は、あなたの家を静かに蝕む「キクイムシ」という害虫の仕業かもしれないのです。キクイムシは、その名の通り木材を好んで食べる小さな甲虫の総称です。問題となるのは、木材の内部に産み付けられた卵から孵化した幼虫です。幼虫は、孵化してから成虫になるまでの数ヶ月から数年間、木材の内部をトンネルのように食べ進みながら成長します。この間、私たちはその存在に気づくことができません。そして、十分に成長した幼虫が蛹を経て成虫になると、外の世界へ脱出するために、木材の表面に向かって穴を開けます。この時に、これまで幼虫が内部で食べて排出したフンや、穴を開ける際に出た木くずが、その小さな穴から外へと押し出されるのです。つまり、私たちが目にするあの細かな木くずは、キクイムシがすでに家の中の木材で育ち、成虫となって飛び出してきた、あるいは今まさに飛び出そうとしている決定的な証拠なのです。小さな木くずは、見えない内部で被害が進行していることを示す危険なサイン。これを放置することは、家の構造や大切な家具を危険に晒すことに他なりません。