ある夏の日、一軒家の二階の部屋で過ごしていた住民が、天井付近から微かな羽音と、壁を引っ掻くような音を聞くようになりました。最初は気のせいか、あるいはネズミか何かだろうと考えていましたが、音が日増しに大きくなり、不安を感じたため、専門業者に調査を依頼しました。調査の結果、原因は驚くべきものでした。屋根裏に、直径50センチメートルを超える巨大なキイロスズメバチの巣が作られていたのです。巣は断熱材をかき分け、天井板のすぐ裏にまで達しており、住民が聞いていた音は、巣の中で活動する蜂の羽音や、巣を拡張するために壁材をかじる音だったのです。キイロスズメバチは都市部でも適応力が高く、閉鎖的な空間を好んで巣を作るため、屋根裏は格好の営巣場所となります。この事例のように、巣が大きくなるまで気づかれないケースも少なくありません。駆除作業は困難を極めました。屋根裏への入り口が狭く、作業スペースも限られていたため、完全防護服を着用した作業員が入るのも一苦労でした。巣が巨大であるため、内部にいる蜂の数も膨大で、駆除には特殊な薬剤と機材が必要となりました。作業員は慎重に巣に接近し、薬剤を注入。その後、巣を少しずつ崩しながら撤去するという、時間と手間のかかる作業を行いました。撤去された巣は数層にも及び、その規模の大きさを物語っていました。駆除後、再発防止策として、蜂の侵入経路となった可能性のある換気口や外壁の隙間などを特定し、金網やコーキング剤で塞ぐ処置が施されました。この事例から学べる教訓はいくつかあります。まず、家屋の異変、特に原因不明の音や、普段見かけない場所での蜂の出入りに気づいたら、早めに専門家に相談することの重要性です。巣は時間と共に急速に大きくなり、駆除の難易度も危険度も増していきます。早期発見、早期対処が被害を最小限に抑える鍵となります。また、家屋のメンテナンスも重要です。外壁のひび割れや換気口の破損など、蜂が侵入できるような隙間がないか定期的に点検し、必要であれば修繕しておくことが、巣作りを未然に防ぐことに繋がります。屋根裏のような見えない場所での脅威は、気づきにくいからこそ、日頃からの注意と適切な対応が求められます。
屋根裏のスズメバチ駆除事例とその教訓