それは、ある梅雨時のことでした。キッチンでいつものように料理をしようと、戸棚から小麦粉の袋を取り出した瞬間、何やら違和感を覚えました。袋の表面に、微かに白い粉のようなものが付着しているのです。最初は単にこぼれた小麦粉かと思ったのですが、目を凝らしてよく見ると、その「粉」がゆっくりと動いているではありませんか。「えっ、虫?」思わず声を上げ、心臓がドキッとしました。体長は1ミリにも満たないような、本当に小さな白い点々。それが無数に、小麦粉の袋だけでなく、棚板の上にも広がっていたのです。すぐさまインターネットで「キッチン 白い 小さい 虫」と検索。表示された画像や情報から、おそらくコナダニだろうと見当をつけました。高温多湿を好み、粉製品に発生しやすいという特徴が、我が家の状況と一致していました。ショックと同時に、猛烈な駆除欲が湧き上がってきました。まず、発生源と思われる小麦粉や他の粉製品、乾物などを全てチェックし、怪しいものは泣く泣く処分。棚の中身を全て出し、掃除機で隅々まで吸い取りました。その後、アルコールスプレーを吹き付けた布で、棚板や壁を念入りに拭き上げました。食品を戻す際も、全て密閉容器に入れ替えました。それから数日間は、毎日キッチンの棚をチェックし、少しでも白い点を見つけたらすぐに拭き取る、という作業を繰り返しました。幸い、徹底的な清掃と食品管理が功を奏したのか、徐々にその姿を見ることはなくなりました。しかし、あの小さな白い虫がうごめいていた光景は、今でも忘れられません。この一件以来、キッチンの清掃と食品の保存方法には、以前にも増して気を使うようになりました。あの小さな侵入者は、私に衛生管理の重要性を改めて教えてくれた、ある意味での反面教師だったのかもしれません。