キセルガイは、その独特な形状から見かけると印象に残る陸貝ですが、庭や畑を持つ人にとっては、時に「害虫」として認識されることがあります。自然界では主にコケや菌類を食べているとされるキセルガイですが、生息環境や餌の状況によっては、人間が大切に育てている植物に被害を与えることがあるからです。特に被害を受けやすいのは、柔らかい新芽や若葉、花弁などです。キセルガイがこれらの部分を食害すると、葉に穴が開いたり、縁がギザギザになったり、ひどい場合には新芽が食べられてしまい、植物の生育が阻害されることもあります。特に、苗を植えたばかりの時や、種から育てている弱い植物は、キセルガイの食害によって大きなダメージを受ける可能性があります。また、キセルガイは湿った場所を好むため、梅雨時や長雨の後などに大量発生することがあります。そうなると、庭の美観を損ねるだけでなく、歩いていると踏んでしまったり、洗濯物や壁などに付着したりすることもあり、見た目の不快感から「不快害虫」として扱われることも少なくありません。石垣やブロック塀、植木鉢の下などにびっしりと付いている様子は、決して気分の良いものではありません。ただし、キセルガイによる農業被害が、他の主要な農業害虫、例えば大型のカタツムリやナメクジ、あるいは特定の昆虫類などと比較して、常に深刻であるとは限りません。食害の程度は、キセルガイの種類、密度、そして周囲の餌環境によって大きく左右されます。コケや落ち葉など、他に食べるものが豊富にあれば、植物への被害は少ないかもしれません。しかし、特定の環境下で大量発生し、園芸植物や一部の農作物に被害を与えている場合には、やはり対策が必要な「害虫」とみなされるのです。