ヤンバルの森に潜む恐怖のムカデ、トビズムカデ
沖縄本島北部の広大な森林地帯「やんばる」は世界自然遺産にも登録され豊かな生態系を育んでいますが、その森の中や周辺の集落には日本最大級のムカデであるトビズムカデが生息しており、地元住民やキャンパーたちに恐れられています。トビズムカデは体長が20センチ近くになることもあり、その赤と黒の毒々しい配色は見た目にも強烈なインパクトを与えますが、最大の特徴はその攻撃性の高さと強力な毒にあります。彼らは肉食性で昆虫だけでなくネズミやトカゲなども捕食し、動くものに対して敏感に反応して噛み付く習性があるため、就寝中に布団に入り込んできたムカデに噛まれるという被害が後を絶ちません。噛まれると激しい痛みと腫れが生じ、毒に含まれるヒスタミンやセロトニンといった成分によってアナフィラキシーショックを引き起こす可能性もあり、過去には死亡例も報告されているほどです。沖縄の古民家や自然に近い住宅では、サッシの隙間や床下、換気口などから室内に侵入してくることが多いため、家の周りにムカデ返しとなる粉剤(殺虫剤)を撒いたり、侵入経路となりそうな隙間をパテや金網で塞いだりする対策が不可欠です。また、噛まれた際の応急処置としては、43度から45度程度の熱めのシャワーで患部を温めながら洗い流すことが推奨されており(毒の酵素が熱に弱いため)、逆に冷やすと痛みが強くなる場合があるため注意が必要です。自然と共に生きるということは、こうした危険生物とも隣り合わせであるということを意味しており、ヤンバルでの生活やレジャーにおいては、ムカデの習性を知り、適切な予防と対処法を身につけておくことが、安全に楽しむための最低条件となります。