あれは数年前の冬のことでしたが、私は「まさかこんな寒い時期に鳩が卵を産むわけがない」という勝手な思い込みと油断から、夏の間設置していた防鳥ネットが見栄えが悪いという理由で取り外してしまい、それが我が家のベランダ崩壊の序曲となるとは夢にも思っていませんでした。年末の忙しさに追われてベランダに出る機会が減っていたある日、窓の外から「クルックー」という聞き慣れない声が聞こえカーテンを開けてみると、そこにはエアコンの室外機と壁の隙間に枯れ枝を積み上げ我が物顔で鎮座する二羽の鳩の姿があり、よく見ると親鳥のお腹の下には白い卵が二つも隠されていました。慌ててネットで調べると鳥獣保護法により卵の撤去は違法であると知り、私は行政に相談するも「巣立つまで待ってください」と言われるばかりで、そこからの約一ヶ月間はまさに地獄のような日々でした。親鳥は交代で卵を温め続け、やがて孵化したヒナは親から口移しで餌をもらいながら日に日に巨大化し、それに比例してベランダには大量の糞が撒き散らされ、洗濯物は部屋干しを余儀なくされ、毎朝早朝から響く鳴き声と羽音でノイローゼ気味になりました。さらに最悪だったのは、ヒナが巣立った後もその場所を「安全な実家」と認識したのか、数週間もしないうちに再び親鳥が戻ってきて次の産卵を始めようとしたことであり、私は高い授業料を払って専門業者に依頼し、徹底的な清掃と強力な忌避剤、そして業務用の頑丈なネット設置を行ってようやく平和を取り戻しました。この壮絶な体験から私が学んだ教訓は、鳩にオフシーズンなど存在しないということであり、季節を問わず常に警戒を怠らず、少しでも気配を感じたら即座に対策を打つことの重要さを、身をもって痛感することとなりました。