やけど虫による線状皮膚炎の恐怖
肌に現れる、火傷のような線状の跡と、ヒリヒリとした痛みの原因として、最も疑われるべき犯人の一人が、通称「やけど虫」、正式名称を「アオバアリガタハネカクシ」という、体長わずか数ミリの小さな甲虫です。この虫は、決して人を刺したり咬んだりするわけではありません。しかし、その体液には「ペデリン」という、非常に強力な毒素が含まれており、これが私たちの皮膚に、深刻なダメージを与えるのです。やけど虫は、水田や畑、湿った草地などに生息し、夏場の夜、光に誘われて家の中に侵入してくることがあります。そして、私たちの腕や首などに留まった虫を、知らずに手で払いのけたり、寝ている間に無意識に潰してしまったりした時、悲劇は起こります。潰れた虫の体から染み出した毒液が、皮膚に付着。そして、その虫の体の一部が、払いのける動作によって、皮膚の上を線を描くように移動することで、毒液が線状に塗りつけられるのです。これが、火傷のような「線状皮膚炎」が起こるメカニズムです。症状は、すぐには現れません。数時間から半日程度の潜伏期間を経て、突然、灼熱感を伴う赤いみみず腫れとなって現れます。その後、急速に小さな水ぶくれ(水疱)が多数形成され、それらが繋がって、大きな水ぶくれになることもあります。痛みとかゆみは非常に強く、症状のピークは2〜3日続きます。水ぶくれが破れると、皮膚がただれた状態(びらん)となり、治癒までに1〜2週間を要します。もし、やけど虫らしき虫に触れてしまった場合は、絶対にその手で患部をこすらず、すぐに大量の流水と石鹸で、優しく洗い流すことが、症状を最小限に抑えるための、最も重要な応急処置です。